メンバー紹介

前田 正明

株式会社吉次園 代表取締役

PROFILE

前田 正明(まえだ・まさあき) 1981年9月生まれ。熊本市出身。中学を卒業後、自衛隊へ入隊し埼玉熊谷基地、沖縄那覇基地へ。自衛隊の任務に従事しながら通信制の大学にて経営を学ぶ。約9年勤めた後、2006年に熊本へUターンし吉次園に入社。入社後中小企業診断士を取得。2019年10月から代表取締役に就任。

農家から「モノ」と「コト」を提供する観光農園へ

事業内容を教えてください。

前田 正明 株式会社吉次園 代表取締役(以下 前田社長)現在は果物(いちご、ぶどう、りんご、なし、みかん、かき等)の生産・販売がベースにありながら、収穫体験のできる観光農業や通販、カフェの経営が事業の柱となっています。当社は1989年に観光果樹園吉次園という個人事業でスタートし、農業は私が3代目となります。創業当時はりんごとブドウなどの果樹の生産・販売から始めましたが、父はいずれ生産直売や観光農業がしたいと考えていたようです。現在は私と弟の二人が中心となって事業をおこなっていますが、私も弟も農業は素人でしたので初めは大変でした…。

事業を引き継ぎ、どのようなことから始められたのですか?

前田社長2006年に熊本に戻ってきて、2007年には株式会社として法人化しました。まずは生産の技術を学びながら、新たな取り組みにも積極的に力を入れていきました。野菜であれば1年のうちに結果が出せるので試行錯誤しやすいのですが、果樹というものは植えてから結果が出るまで3年から5年かかります。そのため、当時は果樹の生産技術を高めることや経営のスピード感が出ないことに難しさを感じていました。また、新たな取り組みとしてはインターネットの活用になります。2006年頃にはHPなども自分で制作しましたが、この時の取り組みが無ければ今の成果は出せていないと言っても過言ではありません。HPを作り、ブログで情報発信を積極的におこなったことで、先代の時と比べて週末のレジャー利用で若い方が増えましたね。
また、コロナ前まで力を入れていたのはインバウンドの集客になります。台湾や香港に直接出向き、旅行代理店を訪問して営業したり、熊本県内の農園や観光連盟などと組み、海外のブロガーや記者を招くモニターツアーなども実施していました。海外から年間約1万人を超えるまで認知度も上がり、非常に喜んで頂きました。現在は新型コロナの影響もありインバウンド需要はなくなりましたが、県内のお客様のレジャー利用や通販、直売所での購入、カフェ利用が非常に増えています。これまで生産技術の向上、生産規模・面積の拡大、ITの活用、マーケティングといった事業戦略の組み合わせが上手くできてきていたことが事業を拡大してこれた要因でもあると思います。

全てのライフスタイルで利用頂けるフルーツリゾート

今後のビジョンを教えてください。

前田社長壮大な夢にはなるのですが…(笑)将来的には熊本に西日本一のフルーツリゾートを作りたいと考えています。フルーツ狩りに来ていただく方はご家族も多いのですが、連れてこられるお子さんは小学校高学年、中学生、高校生になると利用頂く機会が少なくなっています。フルーツは様々な点で魅力がある食べ物ですので、各ライフスタイルにおいてお客様に利用いただきたいと考えています。具体的には、フルーツ狩りをしてワインを作ったり、温泉があって汗を流したり、山の上から果樹園や夕日を見てホテルに宿泊したり、キャンプ場でBBQをしたり、カフェやレストランを併設して食事のシーンで利用頂いたり、結婚式場なども建てて冠婚葬祭で使って頂いたり・・・。実現に向けて様々な課題が山積みにはなりますが、小さいお子さんからいくつになっても利用していただけるような、お客様の思い出作りの一環を担っていきたいと考えています。
また、直近では「農家直送のフルーツ定期便」などの通販をさらに伸ばしていきたいと思います。現在は約10戸の近隣農家の方々と協力し、それぞれの品質の良い果物を12か月間にわたってご自宅にお届けしています。こうした繋がりは元々は私が熊本に帰ってきて農業仲間もいない中、ネットワークを広げたいという想いからマルシェ(月一の朝市)を始めたことがきっかけでした。当時から自社でおこなっていた通販と各農家の強みを生かせないかと考え、一番おいしい時季にそれぞれの旬な果物を農家直送で届けられるような定期便を始めました。今後はプレミアムフルーツ定期便やお一人様用のフルーツ定期便など様々なニーズに合わせた商品も作っていきたいですね。

新しい事には今後も積極的にチャレンジしていきたいと。

前田社長私は利益を出すことが経営の目的ではないと考えているので、積極的に投資しています。土地を借りてハウスを立てたり、新しい品種の果物を育ててみたり、生産性を上げるための各種のシステムを導入したり・・・新しいことをいち早くやるように意識しています。農業生産管理システムも以前から導入していますので、各品種・ハウスの生産量や時間を見える化し前年対比で管理することができます。通販に関しても初めは6か月定期便としてサービスを開始し、軌道に乗ってきた段階でシステムに投資しながら協力していただける農家の方を集め、12カ月の定期便にまで広げることができました。今後も世の中に必要とされる存在であり続けるためにも、日々変化し続ける必要があります。当社が新しいことに積極的にチャレンジすることで、若い農家の方々や一般の方々にもっと農業や観光農園の楽しさや魅力を伝えていけると嬉しいですね。

交流により異業種のエッセンスが学べる場

熊本創生企業家ネットワークに入会されていかがですか?

前田社長入会してまだ1年も無いのですが、期待以上に色々と勉強させて頂いています。ただ、新型コロナの影響でリモート参加も増え、皆さんとのコミュニケーションが取れていないのは私の中での課題です。県内の経営者の方々がどのような考えで事業を行われており、どんな課題を抱えているのか、今後どのような事業展開を考えられているのか・・・お互いに共有し、さらに学ばせていただきたいと考えています。また、以前参加したIPO勉強会では直接上場企業の代表の方に質問させていただきました。なかなか普段では関わることのできない方々の話を聞くことができ、直接質問できる場というのは非常に貴重ですよね。