メンバー紹介

神園 久二子

有限会社神園交通 代表取締役専務

PROFILE

神園 久二子(かみぞの・くにこ) 1986年8月生まれ。八代市出身。熊本県立第二高等学校、京都造形芸術大学(現:京都藝大)を卒業後、東京のデザイン制作会社に勤める。2016年に有限会社神園交通に入社し、2021年に取締役に就任。

創業60年以上を誇る八代市の一大インフラ企業

事業内容を教えてください。

神園 久二子 有限会社神園交通 代表取締役専務(以下 神園代表)現在は八代市を中心としてタクシー事業、グループ旅行や学校行事・冠婚葬祭などでご利用頂いている貸し切りバス事業、八代市内と阿蘇くまもと空港・運転免許センターをつなぐ高速バス事業、八代発着のツアーを主催・企画しているトラベル事業の4つの事業をメインにおこなっています。
創業した1956年から売上として一番大きいのはタクシー事業になります。祖父がタクシー1台からスタートした事業を、先代の父が、貸し切りバスや高速バス、旅行と事業を広げてきました。また、以前より祖父も父も「人の役に立つ人間になれ」という言葉を大事にし、当社の企業理念を「旅客輸送を通じて、社会に対し、最大の利益提供者となる」と定めました。創業から65年以上になりますが、地域の方々には昔から馴染みのある企業だと言って頂いています。これも、祖父と父が創業時から利他的な考え方で理念を体現してきたからこそ、企業の価値が高まり、地域の方に必要としていただける会社になったのだと改めて実感しています。

歴史がある会社を継ぐことに不安はありませんでしたか?

神園代表非常に不安は大きかったですね…。5年程前に当社に入社しましたが、元々はデザイン系の仕事に携わっていたため全くの畑違いでした。また、当時から父の病気が進行しており、後継者の話も家族間で出ていましたが話がまとまらない状況でした。他に誰も継ぐ者がおらず、私が会社を継ぐと決めたのも2年前のことです。その後、決心して1年も経たない間に父が亡くなってしまい、新型コロナの感染拡大、移動ニーズの減少によるタクシー市場の縮小、熊本豪雨災害…予想もしない試練に直面する中でのスタートとなりました。
事業承継後に様々な課題が待ち受けていることは把握していましたが、その上で決断できたのは、社員の方々や地域のために、この事業・会社を失くしてはいけない。という想いからでした。100人近い社員の方々を路頭に迷わせるわけにはいかない。これまで育てて頂いた八代という街に恩返しがしたい。という強い想いです。まだまだこれから取り組むべきことを多く抱えていますが、現在は叔父と共に、2代代表として会社の経営をおこなっています。また、経営者としてより正しい判断・決断をしていくために、私自身が日々学び成長していく必要があります。「私が会社を継いだ選択」や「父が会社を残した選択」、そして「社員の方々が会社に残ってくれている選択」を正解に導くためにも、頑張り続ける理由があると思っています。

レガシーの取捨選択と、時代に合わせた新たなチャレンジ

事業承継後、どのようなところから取り組まれているのでしょうか?

神園代表まずは社員一人一人との関係性を築くことに注力しています。会長というトップがいなくなったことと新型コロナの影響もあり、どうしても社員の心がばらばらになり、内向きでネガティブな空気感が漂っている印象がありました。今後さらに法改正や規制により業界的にも厳しくなることが予想されます。ただ、その中で企業として生き残っていくためにも、職場の士気を高め、組織体制を強化する必要があります。
社員一人一人が前向きで肯定的な価値観を持ち、安心してやりがいを持って働ける会社にするためにもまずは相互理解を深めたいと考えました。先代の父から承継したことでもありますが、早朝のドライバーの方の朝礼・点呼は毎日欠かさず行っています。一人一人の社員の方の顔を見て、体調の確認や他愛無い話をすることが相互理解につながり、少しずつ良い関係が築けてきたように感じます。

今後のビジョンを教えてください。

神園代表まずはタクシーとバス事業の土台を固めた上で、新たな事業の立ち上げや社員教育・女性の格差是正などにも取り組んでいきたいと考えています。当社の強みは地域に根付いて様々な事業を展開していることです。各事業におけるシナジー効果を意識しつつ、地域に最大限の利益を提供できるような取り組みを進めていきたいと思います。
また、今後はさらに子育てを行う女性が安心して働ける様に、学童保育などを通してサポートできる体制を整えたいですね。当社ではタクシードライバーとしての経験だけではなく、オペレーターや配車室、旅行スタッフなど様々な経験を積むことができます。当社の強みでもある複数の事業体制を通して、キャリアの選択肢を広げながら、人が育つような会社を目指したいと考えています。
当社はレガシーが多く残っている会社です。イノベーションが起こりづらい業界とも言われますが、残すべき理念や人にしかできないサービスは大事にしながら、新たな取り組みにもチャレンジしていきたいと思います。

経営者としてのマインドをセットし、自身と企業の成長へ

熊本創生企業家ネットワークに入会されていかがでしたか?

神園代表後継者として誰から何を学べばいいのか右も左もわからない状況で、経営の基礎から学ぶことができたのは大きかったですね。経営者やビジネスマンとして当たり前だと思うことでも意外と知らないことも多く、それを素直に聞いて学べる場でもあります。私自身、経営者としてのマインドを改めてセットし、より強い覚悟を持つことにもつながりました。参加者の皆さまは良い方ばかりで、普段ではお会いできないような方も多く、毎月直接お話しが出来るのは本当に価値があると感じています。
また、私自身が経営者としての器を広げていかないと、会社は経営者の器以上に成長していかないとも実感しています。熊本創生起業家ネットワークへの参加を通して、私自身の成長を促し、日々会社の成長にもつなげていきたいと思います。