メンバー紹介

本郷 秀之

スターティアホールディングス株式会社代表

PROFILE

18歳で熊本から上京し、1996年に現在のスターティアホールディングス株式会社(証券コード3393)を創業。 AR(拡張現実)やWEBアプリケーション等のITインフラを提供している。 また、熊本で「公益財団法人ほしのわ(奨学金事業)」、「一般社団法人熊本創生企業家ネットワーク(経営者育成事業)」を設立し、活動を行っている。

「自分にできる熊本の復興は『経営者を育てること』」

本郷さんは東証一部上場企業で、東京に本社を構えアジア圏を中心に事業を展開されていますが、熊本の経営者を育てるという地域貢献に取り組まれるきっかけを教えて下さい。

本郷秀之 熊本創生企業家ネットワーク代表理事(以下、本郷代表理事)熊本創生企業家ネットワークを立ち上げ、熊本の経営者を育成している理由は、熊本地震からの復興が目的なんです。18歳で上京して東京で働き、29歳で独立、ずっと東京で働き、いまではアジア各地に展開しているため、これまで熊本を強く意識したことはありませんでした。しかし、熊本地震で故郷熊本が傷つき、ふるさと納税をしたり、義援金を送ったりする中で、それだけでは復興は程遠いと感じました。震災以前より、学生の4~6割が県外に就職していき、少子高齢化が深刻化していくなかで、ただ寄付をしたからと言って解決できるものではありません。
 「熊本のために経営者としてできることはなんだろうか」そう考えたときに、これまで自分の学んだこと、失敗してきたことを共有することで、熊本の経営者を育て、熊本の企業の売上を増加させ、雇用も増やしていくこと、そして納税額も増加させていくことで経済的に良い循環を作っていくことだと考えました。

持続していく経済の基盤を作り上げていくということですね。そこですぐに熊本創生企業家ネットワークを立ち上げられたのですか?

本郷代表理事いえ、最初は県内にある既存の団体や組織が主催するセミナーで講師の依頼を受け、経営者向けに話をしていました。しかし、熊本はビジネスにおいても閉鎖的な雰囲気が強く、グローバル化やIT化が進む中で、問題を先送りしている企業が多いように感じました。
実際に、質問のレベルも非常に低く、ただ聞いてメモを取って満足する方も多いように見受けられました。
経営とは会合で他の経営者とお酒を飲んで、自分たちが経営者だと認め合うことではありません。それだけで人脈ができるわけでもありません。
真剣に経営に向き合っていないというのが、正直な印象でしたね。
そんなときに熊本創生企業家ネットワークの立ち上げメンバーである地元の経営者の方と出会い、「熊本には情報が入ってこない」「経営について学べる環境がない」という話を聞きました。話をしているうちに「本郷さん、作っちゃいましょうよ」という話を受け、自ら熊本創生企業家ネットワークを立ち上げることとなりました。

熊本創生企業家ネットワークで掲げる「100.10.1プロジェクト」

これまで熊本になかった本質的な経営について学ぶ場を新たに生み出したわけですね。今後のビジョンはどのようにお考えですか?

本郷代表理事熊本創生企業家ネットワークでは、「100.10.1プロジェクト」というプロジェクトを掲げています。まずは100社の経営者が参加すること。次に、その100社が10人ずつ新たに雇用を増やすこと。1社当たり、1億円の営業利益を増加させることを目指しています。
それにより、熊本県内に1000人の雇用が生まれ、100億円の利益が生まれるのです。
そのために本郷塾という名で私が経営についてお話していますし、東京から第一線で活躍する講師を連れてきています。IPOも目指しているので、そこに専門に取り組むIPO部会も設立していますし、月額2万円という格安の会費で、しっかりとコンテンツを用意しています。
その代わり、真剣に熊本のこと、社員のこと、未来の自分のことを考えている経営者を募集しています。目の前のことしか考えず、いい加減な経営をしているような経営者は趣旨にそぐわないので、必要ないと考えています。
こうした環境下で、一緒に学び情報交換し、切磋琢磨していくことが大切なのです。これまでのような閉鎖的な経済ではこれからの時代を勝ち残っていけません。どんな業種がコンペジターになるのかわからない時代です。小さな世界であぐらをかいている経営では、先細っていく未来しかないのです。

実際に熊本創生企業家ネットワークを運営する中で、手応えは感じていますか?

本郷代表理事非常に手応えを感じています。質問のレベルも上がってきていますね。最初は「採用が上手く行かないんだけど、どうしたらいいですか?」といったような表面的な質問が多かったんですよ。ですが、これも「では、なぜ採用が上手く行っていないのか?」と問い返すと、答えられないことが多かったんです。人事制度だけでなく、ビジョンや理念、社内の環境、給与体系など見直すべきところは数多くあるのに、そこまで考えずにただ「上手くいかない」と嘆いているだけの経営者も実は多いのです。しっかり本質に向き合って経営に臨める経営者が増えているからこそ、質問の質もより本質的になってきているんです。

「熊本で成功させ、各地方へ波及させたい」

今後のビジョンとしては、「100.10.1プロジェクト」推進による企業・経済の活性化を実現していくのですか。

本郷代表理事そうですね、熊本創生企業家ネットワークとしては、まず「100.10.1プロジェクト」を通して経営者の能力向上、企業の業績向上、雇用促進を進めていきたいと思います。会の中から、上場企業も輩出していきたいと考えています。
別軸で、「ほしのわ」という財団法人を立ち上げました。熊本県から許認可を得て公益財団となった法人ですが、これは年間36万円の返済義務のない奨学金を理系の学生に支給する組織です。学生の支援をするとともに、熊本創生企業家ネットワークに所属する企業と高専の生徒や理系の大学生をつなげて、県内にも素晴らしい企業があることを知ってもらい、県外への人材流出を抑止していきたいと考えています。熊本県の奨学金財団で公益認定を受けた初めての財団となるため、県のみなさんからも賛同いただき、応援していただいているんです。

経済から地域の活性化に繋がる取り組みですね。

本郷代表理事えぇ、東京には地方出身で活躍している経営者がたくさんいます。熊本で上手く行けば、そういった経営者にこの流れを伝え日本全国の各地域で同じように横展開してもらえないかと考えています。やはり、その地域に関わる人間がやることが地方創生に繋がります。

震災を機に、ということですがそれでもかなり精力的に活動されている印象ですが、そこにはどんな思いが。

本郷代表理事60歳で次世代にバトンタッチしていこうと考えたときに、その前に育成していかなければならないという思いと、その後の自分の生き方について考えました。栄誉やお金はもう必要ありません。自分のアイデンティティはなんだろうと考えたときに両親と、ふるさとの長洲町がありました。その頃の経験が今の自分を作っていると考えると、そのためになにかしたいという思いが強く生まれましたね。
私の経験や失敗談が熊本の経営者の糧になるのであれば、しっかり伝えていきたいと思いますし、その先に熊本の活性化を目指していきたいと思います。